５日目～帰国
朝起きた時は美しい朝焼けだったが、釣りに出発する頃になると雲が増え雨も落ち始めた。
この日は釣行最終日だった。１８時にはキャンプを出てキングサーモンの空港へ向かう必要があった。
美しい朝焼けついに最終日となってしまった
これまでの３日間はメンバーが全員同じ釣り場で釣りをしてきたが、この日は各自が希望の釣り場に行こうという事になった。前夜の話し合いで４名は本流でボートから大物を狙うことを希望し、１名は昨日とは違う川へレッドサーモンを釣りに行くことを希望した。
そして僕はもう一度フライアウトしたいと思い、ロッジのオーナーのジムにリクエストを出してみた。ジムからは天候が急変した場合、釣り場からセスナで戻ってくるのが遅れる可能性もあるので当日朝の天候で決めようという話になった。
朝一番の天候ではセスナのパイロットからは特に問題があるという発言はなかった。しかし、最初の客を川に送ってキャンプに戻って来るなり、このまま天候が崩れると、夕方には定刻に戻って来られる状況ではなくなる可能性が極めて高いと告げられた。戻ってこられない恐れが若干ある程度なら行きたいと思ったが、戻れない可能性の方が高い状況では行きたいとは言えなかった。仕方なく他の釣り人を乗せて川に向かう飛行機を桟橋に残って見送った。
フライアウトするはずだった水上セスナを桟橋から見送る天候には逆らえなかった
他の釣り人は全員釣りに出発した後だったので、僕は一人取り残された形になってしまった。このまま夕方まで桟橋で釣りをしていようかとも思ったが、とりあえずジムに相談してみることにした。メインロッジにいたジムに事情を話すとボートで釣りに出かけた他のメンバーの所まで送ってくれることになった。タックルを急いで本流用に変え、ジムのボートで川を下った。２０分ほどでＡ氏とＵ氏の乗るボートと合流することができた。
オーナーのジムがA氏とU氏の乗るボートまで送ってくれたジムはホスピタリティー溢れるオーナーだった
早速支度を整えて釣り始めた。この日は以下のようなタックルを使った。
ロッド：ＳＡＧＥ ＬＡＵＮＣＥ８９０－４
リール：ＳＡＧＥ １８６０
ライン：８番 マルチティップライン タイプⅣ
リーダー：１６ｌｂ ４ｆｔ
フライ：各種ストリーマー（おもにガイドのものを使用）
初日同様クロスに投げてフライをスイングさせ後半リトリーブを加えて魚を誘った。しかしアタリはほとんどなかった。この辺りのポイントは魚の活性が低いようだった。そこで下流に大きく移動して、クリークの流れ込みのポイントで遡上してくるシルバーサーモンを狙うことにした。３０分近くかけて目的のポイントまで移動した。
ポイントを移動するガイドのウェズリー急に１人増えたにもかかわらず温かく迎え入れてくれた
移動したポイントで釣り始めるとすぐにアタリがあった。釣れてきた魚は３０センチに満たないレインボートラウトだった。それでもこの日はまともに釣りすらできないのではないかと思っていたので、小さな魚でも釣れて本当に嬉しかった。
この日のファーストキャッチ小さなレインボートラウトだったがそれでも充分嬉しかった
その直後にＵ氏が見事なサイズのシルバーサーモンを釣り上げた。遡上したてのシルバーサーモンはとても美しい魚だった。
Ｕ氏がキャッチしたシルバーサーモン遡上したてのとても美しい魚体だった
このまま釣れ始めるのかと期待したが後が続かなかった。ガイドのウェズリーが頻繁にフライを変えてくれたが結果は芳しくなかった。それでも昼過ぎになってやっと４０センチオーバーのレインボートラウトをキャッチすることができた。まともなサイズがキャッチできてホッとした。
４０センチオーバーのレインボートラウト何とかまともなサイズをキャッチすることができた
その後も遡上するサーモンの姿は確認できるのだが、フライへの反応は芳しくなかった。昼食をとりがてら休憩することにした。サンドイッチを頬張りながらＡ氏の釣りを見学した。
昼食のサンドイッチ昼食は毎日同じメニューだった
Ｕ氏のルアーにスレ掛かりしてきたホワイトフィッシュ日本で言えばウグイのような立場の魚だ
仕事を兼ねて世界中を釣り歩いているＡ氏の腕は確かだった。右から風が吹いている時の対処方法やキャストしたあとのメンディング、リトリーブを始めるタイミングなど、短い時間だったが色々なことを学ぶことができた。Ａ氏のボートに同乗させてもらってよかったと思った。今後の釣りにとても役立つ収穫だった。
釣りを見学している間にＡ氏は良型を２匹フッキングさせたが、いずれもファイトを始めてすぐにブレイクしてしまった。百戦錬磨のＡ氏であってもサーモンは一筋縄ではいかないターゲットだった。
休憩を終え、Ａ氏の釣り方を参考にして釣りを再開した。キャスティングの距離が自分でも驚くほど伸びた。メンディングやリトリーブも少しは上手になったような気がした。
少しするといきなり強いアタリがあった。と同時に水中で銀色の大きな魚体が身をくねらせるのが見えた。シルバーサーモンに違いないと確信した。慎重にファイトを始めた。しかし、走り始めラインを引き出されたのとほぼ同時にフックが外れてしまった。フックセットの強さが足りなかったのと、ドラグの調整が弱かったのが失敗の原因だと思った。やはり未知の釣りはそう簡単に良い結果が出るものではなかった。悔しかったが良い勉強だと自分に言い聞かせた。
このポイントでも魚の反応は芳しくなかったので、今度は上流へ移動することにした。移動中、川の中央の水面に黒い物体を見つけた。近寄って見ると水面すれすれの岩の上で休憩しているアザラシだった。ボートでゆっくり近づいたところ逃げずにこちらを見ていた。１０メートルくらいまで近づいて写真を撮ることができた。こんなにアザラシの近くまで接近できたのは初めてだとウェズリーも驚いていた。思いがけずアザラシウォッチングができてラッキーだった。
岩の上で休憩していたアザラシ間近で見られてラッキーだった
この後、上流のポイントをいくつか回り、１７時近くまで釣りを続けたが誰も１匹もキャッチできなかった。
１７時にキャンプに戻り荷造りをした。１８時にキャンプを出発する時までにフライアウトした釣り人は戻ってきていなかった。フライアウトを断念したことは正解だった。
荷物をまとめてキャンプを後にするハプニングも多かったがとても充実した４日間だった
キングサーモン空港には１８時半に着いた。搭乗手続きは順調に済んだが、搭乗予定時刻が近づいても搭乗が始まる気配は一向になかった。アナウンスもないので窓口のスタッフに確認すると遅延だと言う。新しい搭乗予定時刻は２１時を回ると言われた。
キングサーモン空港の出発ロビー搭乗予定時刻になっても遅延のアナウンスすらなかった
本来ならアンカレッジに着いてホテルにチェックインしてから夕食を食べる予定だったのだが、アンカレッジに着くのが何時になるか分からなくなったのでキングサーモンで夕食をとることにした。空港係員に確認すると念のため３０分後くらいには戻ってこいと言われた。こういう点は融通が効かなかった。
キングサーモン唯一のレストランは空港の隣にあった。何かあった時の為に空港で待機してくれるというＡ氏を残して５名でレストランに向かった。入店してすぐフロアスタッフに事情を説明し３０分で食べられるメニューがあるか尋ねた。するとハンバーガーなら大丈夫だと答えが帰ってきた。そこでハンバーガーを６個注文し１つは持ち帰れるように包んでもらうことにした。先に来たビールを飲んで待っていると、すぐに大きなハンバーガーが運ばれてきた。味もなかなか良かった。
キングサーモン唯一のレストランバーコーナーは地元の客で賑わっていた
ハンバーガー巨大なパテが意外なほどおいしかった
食べ終わって急いで空港に戻ったが特に状況に変化はなく、結局搭乗が始まったのは２１時過ぎだった。
離陸後アンカレッジまでは１時間ほどのフライトだった。上昇後、雲の上に出るとまだ日没しておらず夕日が眩しかった。眼下には氷河を抱いた雪山がきれいに見えた。
雲の上から見た夕日２２時を過ぎていても太陽はまだ沈んでいなかった
眼下に見えた氷河を抱いた雪山氷河の青さが印象的だった
アンカレッジ空港に着いて荷物を受け取り、ホテルの迎えのバスに乗った時は既に２３時を回っていた。ホテルはダウンタウンにあり、おしゃれで素敵なホテルだった。チェックインを済ませ部屋に入ってシャワーを浴びる頃には日付が既に変わっていた。
帰路のアンカレッジで宿泊したラマダ・アンカレッジ・ホテルおしゃれでかわいらしいホテルだった
客室の様子とてもくつろげる雰囲気の部屋だった
翌日はアンカレッジ空港を７時に離陸するシアトル行きの便に搭乗する予定になっていた。そのためホテルを４時に出るバスで空港に向かった。結局ホテルには４時間ほどしか滞在できなかった。
空港に着いて搭乗手続きを済ませ、搭乗ロビーにあるシーフードレストランで朝食をとった。スモークサーモンベーグルがおいしかった。
朝食をとったアンカレッジ空港のシーフードレストラン朝食のメニューも充実していた
スモークサーモンベーグル肉厚のスモークサーモンがたくさんトッピングしてあった
シアトルまでの飛行は順調だった。機中は爆睡していた。昼食は空港内のシーフードレストランでとった。こちらでは名物のダンジネスクラブのスープとハリバットのフィッシュ＆チップスを注文した。どちらも素晴らしい味だった。今回の旅では食事に失望することは皆無だった。
昼食をとったシアトル空港のシーフードレストランスタッフの応対も親切だった
ダンジネスクラブのスープカニの風味が濃くておいしいスープだった
ハリバットのフィッシュ＆チップス肉厚のハリバットの白身はとてもジューシーだった
成田行きの飛行機は定刻にシアトル国際空港を離陸し、順調な飛行で成田空港に戻ってきた。成田空港に着いたのは８月１６日１６時半だった。ターミナルビルを出た途端、猛烈な蒸し暑さに襲われた。その瞬間、楽しかったアラスカ釣行が終わったことを実感した。
