今年の準備も極めて簡単だった。5月にマリーにメールを入れて日程を伝え、8月に航空券とレンタカーを予約し、10月にフライを巻き、出発前に土産のクッキーを買った程度だ。
ただ、一つだけ追加の買い物があった。ニュージーランドでは今シーズンからフェルトソールのウェーディングシューズの使用が禁止されたため、ラバーソールのものを新調しなければならなかった。南島の一部で繁殖が確認された外来珪藻のＤｉｄｙｍｏの繁殖拡大を防ぐための措置だ。
出発日は11月8日土曜日。午後3時前に自宅を出発した。乗車した山手線が非常停止信号により１０分ほど遅れたため、スカイライナーへの乗り継ぎに間に合うか少し心配したが、何とか間に合い予定時刻の１６時半に成田空港に到着することができた。
成田空港での手続きは、いたってスムーズだった。出国手続き後軽めの食事を摂り、１８時に搭乗した。
成田からオークランドに行く便は曜日により、直行の場合とクライストチャーチ経由となる場合がある。土曜出発便はクライストチャーチ経由だ。１８時半に離陸したニュージーランド航空９０便は約１１時間のフライトの後、翌朝９時半にクライストチャーチの空港に到着した。
ここで１時間ほど待機し、オークランド空港には１２時半に到着した。
クライストチャーチ空港の待合室広くてゆったりしていた
オークランド空港での今年の検疫は特に問題なかった。新品のウェーディングシューズを見せると係官はにっこり微笑んでＯＫサインを出した。
到着後すぐにいつものハーツでレンタカーを借り、マリーの住むムルパラの町を目指して出発した。今回の車はトヨタＹＡＲＩＳ、日本でいえばヴィッツだ。旧型を以前所有していたこともあり、運転席に座ってもまったく違和感がなかった。ただ、ミッションがマニュアルだったので、運転を始めてしばらくは発進に気を遣った。
今回使用したレンタカーマニュアルミッションに最初は少し緊張した
出発して２時間ほどでケンブリッジの街にさしかかった。空腹を感じていたので街の中央部にある公園の脇に車を停め、昼食のとれる店を探した。少し歩いたところでＦＩＳＨ＆ＣＨＩＰＳの看板を見つけ、その店でフィッシュバーガーとコーラをテイクアウェーした。公園のベンチでのんびりと頬張った。初夏の風が心地よかった。
ケンブリッジの街で見つけたＦＩＳＨ＆ＣＨＩＰＳの店他にもいろいろなバーガー類がメニューにあった
この日の昼食はフィッシュバーガーとダイエットコーク公園のベンチで頬張った
さらに２時間ほど運転して、１７時過ぎにムルパラの町の外れにあるマリーの家に到着した。日曜日だったのでマリーの家族も皆揃っていた。１年ぶりの再会を喜び合った。
夕食はバーベキュー。家族揃って賑やかな食事となった。
夕食の支度をするマリー右にいるのは愛犬のクッキー
夕食はサーモンとポークのバーベキュー付け合わせの野菜も味が濃くておいしい
夕食後はさっそく、マリーの家の裏を流れるＲ川へイブニングの釣りを楽しみに出かけた。マリーも様子を見についてきてくれた。この時期の日没は２０時少し前だ。２０時を過ぎるころからライズが始まった。
今年は春先から体調を少し崩していたこともあり、日本ではシーズン中一回もフライフィッシングに出かけていなかった。タイでバラマンディを何回か釣っただけだった。直前にほんの数回、コイ釣りや管理釣り場で予行演習をしてきたが、はたして以前と同じようにできるか少々不安だった。
しかし、それは杞憂だった。川の縁に立ち、ライズを目の前にするとフライフィッシャーの自分が自然と覚醒した。
フライをドレッシングし、ラインを伸ばし、ライズと無関係の方向へキャストして距離を合せ、流れを読んでライズの１メートル上流へフライを落とす。ライズ地点にさしかかったフライを魚がゆっくりとくわえ、一呼吸おいてロッドを立てる。まるで、昨日も一昨日もこうして釣りをしていたかのように自然と体が動いた。
「パーフェクト！ ニュージーランドへようこそ」
背後でマリーの声が響いた。
「ありがとう！ 帰ってきたよ」
こうして今年のニュージーランド釣行の幕が開いた。
初日のイブニングはマリーの家の裏川の畔に立つと体が自然と動く
本流育ちの良型のレインボートラウト1年ぶりの再会だ
こちらは岸際でライズしていたブラウントラウト初日から好釣果だった
この夜は狙った４つのライズすべてをキャッチすることができた。
