この日はマリーのガイドで釣りをした。愛犬のクッキーも一緒だった。F川を町外れの入渓点から釣り上ることにした。この区間を釣るのはマリーも今シーズン初めてだった。
入渓してしばらく釣り上がったところで、マリーが対岸の浅い巻き返しのプールをクルージングしている魚を見つけた。強い流れをマリーと肩を組んで渡渉し、上流側からその魚を狙うことにした。
画像右側の浅瀬にクルージングしている魚を見つけたこの川のブラウントラウトはこういう場所によくいる
魚に感づかれないよう姿勢を低くしてポイントに近づき、ドライドロッパーの仕掛けをキャストした。何回かキャストを繰り返したが反応がなかった。低い姿勢ではクルージングしている魚を視認することが難しかった。リスク覚悟で立ち上がり、魚の泳ぐ方向を確認してフライを落とした。すぐにドライフライが水中に沈んだ。
あわせるのと同時に魚は下流に向かって走り始めた。この位置でファイトを続けるのは難しかった。再び強い流れを対岸に渡ることにした。渡渉している間も魚は下り続け、バッキングラインまで引き出された。やっと対岸に着いた時は、魚はすでに下流の岸際の障害物に逃げ込んだ後だった。今回は魚の勝ちだった。悔しかったが、なす術はなかった。
その後もいろいろなポイントを狙いながら釣り上がったが魚の反応は乏しかった。たまに反応があってもかかった直後にラインブレイクするなど不運にも見舞われた。やっとのことで釣り上げた最初の一匹は小ぶりなブラウントラウトだった。それでも一匹釣れた事でとりあえずほっとした。時刻はすでに１１時近かった。
この日最初の一匹は小ぶりなブラントラウトこのサイズでも釣れればとにかく嬉しい
渡渉を繰り返して釣り上がるのでクッキーもちょっと疲れ気味結局、午前中は小ぶりな魚が３匹釣れただけだった。少々気の重いランチとなった。マリーの口数も心なしか少なかった。
サンドイッチを頬張っていると上流から一組の釣り人が現れた。オーストラリア人の釣り人とニュージーランド人のガイドで、上流から釣り下っているとのことだった。午前中に何匹かキャッチしたとのことだった。川の規模はそれなりに大きいが、それでも先行者がいると釣果に影響する。気がさらに重くなった。
「今日はついてないな。魚の残っていそうなポイントだけ選んで手早く釣り上がり、場合によっては夕方別の川に行こうか」
マリーも少々落胆した様子だった。
午後はいわゆる竿抜けの魚を狙う釣りとなった。岸際の潅木の際や小さな落ち込みなどを重点的に狙った。これが結果的には正解だった。遡上やキャスティングは難しくなったが、こうしたポイントには良型の魚が残っていた。マリーは魚の着き場を熟知していた。
普段は浅瀬を遡行するような場所でも、敢えて水深のある対岸の潅木際を釣り上がった。潅木の途切れた地点を狙ってキャストするとアタリがあった。あわせると強い手ごたえが帰ってきた。流れの緩やかや場所がなくランディングには苦労したが、なんとかネットに収めることができた。この日最初の良型はブラウントラウトだった。自然と笑みがこぼれた。
灌木の際を狙ってかけた良型と懸命にファイトする下っても浅瀬がないのでこの場所でファイトするしかない
良型をやっとキャッチできて一安心また、岸際の小さなプールのかけ上がりでは、ドライドロッパーの仕掛けに良型のレインボートラウトが反応してくれた。午後のほうが午前中より魚の反応が良かった。
左の岸際にあるちょっとした落ち込みこうした場所にも良型魚が潜んでいる
ドライドロッパーの仕掛けで丹念に探ってキャッチした会心の一匹さらに釣り上がると取水ポンプの取入口がある潅木下流の深みでライズを見つけた。そっと近づき、ドロッパーまでのティペットを短くしたドライドロッパーの仕掛けを流した。数等目に魚影が浮上してきた。ドライフライをくわえるかと固唾を呑んで注視したが、水面下で魚は反転してしまった。見切られたかと思ったが、次の瞬間ドライフライが沈んだ。ニンフに反応したのだ。すぐさまロッドを立ててあわせた。魚は重量感たっぷりの抵抗をしたが、やがてランディングネットに収まった。堂々とした体躯のブラウントラウトだった。
パイプ上流の灌木際でライズがあった
堂々とした体躯のブラウントラウトサイトフィッシングで釣ったときは嬉しさが格別だ
その後も何匹かの良型のトラウトをキャッチすることができた。別の川に行く必要はなかった。先行者がいても十分釣りになるニュージーランドの川の懐の深さを感じた。同時にマリーのガイド技術の高さにも改めて敬服した。
夕食後は裏のＲ川に出かけた。この日はマリーと一緒に四輪バイクで出かけた。機動性は良いが、荷台の乗り心地は最悪だった。
イブニングへの足に便利な四輪バイクただし乗り心地は最悪
薄暗くなった流れを胸の高さまで水に浸かって遡上し、倒木下のポイントに向かった。イブニングは前日まで良い釣りができていないことをマリーに話していたので、アプローチは大変だが、釣果が確実に期待できるポイントを選んでくれたのだ。
昨日までのポイントと比べて圧倒的にライズが多かった。おかげで、２０時３０分ごろから２０分ほどで３匹の良型魚をキャッチすることができた。
倒木下の好ポイントもうすぐライズが始まる暗さだ
このサイズがドライで釣れるのだからイブニングの釣りはやめられない
