まだ眠そうなクッキー彼の寝床はきまってこの台車の荷台
この日はＲ川の下流域をボートで下りながら釣りを楽しむことにした。このラフティングの釣りも僕の大好きな釣りの一つだ。
この釣りはボートで川を下りながら、ポイントでボートを停め、ボートから降りて釣ったり、ボートの上から狙ったりするものだ。普段徒歩での釣りでは狙いにくいポイントも釣ることができるのが利点だ。
この日も午前中から好ポイントが連続し、ダブルニンフの仕掛けで良型とのファイトを堪能することができた。
ボートを川辺までおろして出発の準備をするクッキーも出発が待ち遠しそうだ
朝一番にキャッチしたブラウントラウト一度フッキングさせ損ねたが、もう一度フライにアタックしてきた
ボートの上から釣った良型のレインボートラウトジェットボートを背景に撮ろうと思ったが、ボートはちょうど頭の後ろ
少し遅めの昼食は浅場の広がる好ポイントの下流で摂った。昼食のサンドイッチを頬張りながら上流の瀬を眺めていると、岸際に良型の魚影を見つけた。
ボートを岸に揚げて昼食の準備をするマリー彼と一緒に行動しているだけで楽しい
昼食後、早速この魚を狙うことにした。流れが緩くて浅いのでそれほど魚に近づくことはできない。ある程度の距離を取って慎重にキャストした。
ところがこの日は上流側からの風が強く、なかなかフライが思ったところに着水してくれなかった。何十回か試みたがどうしてもうまくいかない。魚は相変わらず同じ場所に定位していた。
そこで１８＃のドロッパーを１６＃に換えてみた。少しでも重くして向かい風でも飛びやすくするためと、サイズを大きくすることで魚から少し離れた位置を流れても魚に見つけられやすくするためだ。さらに、下流の水面で向かい風のプレゼンテーションの練習をして万全を図り、再度挑戦した。
今度は数回目のキャストで狙いの場所にフライを落とせた。魚の少し右をフライが通過しようとしたとき、魚の体が右に動いた。ほぼ同時に水面のフライが沈んだ。
開けた場所だったのでファイトは容易だった。キャッチしたのは老齢のブラウントラウトだった。少し痩せていたが見事な風貌をしていた。
良型魚が定位していた浅瀬魚がいたのは岸から３メートルほどの場所だった
いかつい風貌の老ブラウントラウト擦り切れた鰭が彼の生きてきた歳月を表している
さらに１５メートルほど上流の瀬でも魚影を見つけた。風の強さは相変わらずだったが、先ほどよりは楽にフライを思い通りのラインに流すことができた。この魚も素直にフライに反応してくれた。若く逞しいブラウントラウトだった。
二匹目の魚をヒットさせ、慎重にファイトする近くまで寄せてもまだ安心はできない
若く逞しいブラウントラウト鰭の大きさが見事だ
瀬の上流は浅いフラットな流れが広がっていた。この流れもサイトフィッシングの好ポイントだった。
瀬からこのポイントに移動しようとしたとき、マリーから下流に下がれと指示があった。見ると瀬頭の岸からわずか５０センチほどのところに魚が定位していた。幸いなことに、魚はこちらに気づいた様子はなかった。
「魚を狙ってキャストすると岸際の草にフライをとられやすいぞ。魚の右１メートルのところを狙ってキャストしろ」
マリーから具体的な指示があった。
指示通り魚の右を狙ってフライを投げた。風の影響ですぐには思い通りの場所にフライを落とせなかったが、数投目で狙った位置にフライを落とすことができた。魚はマリーの予想通り自分の右側を流れるフライを見つけ、ためらうことなく口にした。この魚も逞しい躯体のブラウントラウトだった。
三匹目の魚が定位していたのは岸に生えた草からわずか５０センチほどの浅瀬マリーが見つけてくれなければそこを歩こうと思っていた場所だ
ブラウントラウト特有のトルクフルな抵抗を楽しむまさに至福の時だ
背中の盛り上がった魚体のブラウントラウトこの魚は良く太っていた
サイトフィッシングで3匹の連続釣果に気を良くして上流のフラットエリアへやってきた。すぐにマリーが岸際のちょっとした深みに魚影を見つけた。流れが緩いので慎重なプレゼンテーションが求められる状況だった。
そこで、キャスティングの距離を合わせるために、まずポイント右側の開けた流れにフライをキャストした。このライン長で距離はちょうど良い、と判断してピックアップしようとした時、なんとドライフライにいきなり魚が出た。視認できなかったが右側の流れにも魚がいたのだ。マリーと二人、一瞬何が起こったか理解できなかったが、我に返ると二人で大笑いした。ポイントを荒らさぬよう魚を下流側に誘導してランディングし、下流の瀬でリリースした。この魚も美しいブラウントラウトだった。
次に先ほど見つけたブラウントラウトをキャッチし、さらにその上流側でも２匹続けてサイトフィッシングでブラウントラウトをキャッチした。同じポイントでの７匹の連続釣果に僕もマリーも思わず顔がほころんだ。
ランディング直前で魚も観念した様子このフラットエリアでもサイトフィッシングを堪能した
イメージ通りの釣りができすぎて笑いが止まらない状態「このポイントでは何もかもが完璧だったな。７匹連続キャッチは記録だぞ」
マリーがほめてくれた。
その後はあまり良い釣果は得られなかったが、この日はこの釣果だけで十分満足だった。
ボートを陸に揚げる地点まで川を下る今年も天候に恵まれて良い釣りができた
帰りの車の中でマリーが聞いてきた。
「お前は十年前からここに来てるけど、昔と比べて何か変ったと思うことはあるか？」
「そうだなぁ、相変わらず川は良いコンディションだし、森の緑や花は綺麗だし、魚は多いし、お互い年をとったことくらいかな」
そう答えてから、逆に聞いてみた
「そうだ、十年前と比べれば僕も少しは釣りが上手になっただろう？」
「そうだな、少しは、たくさん釣れるようになったかもしれないな」
マリーはいたずらっぽく笑いながらそう答えた。
イブニングはマリーの家の裏のＲ川にボートを降ろし、少し上流にある倒木下のポイントへ向かった。毎年魚が多く集まり好釣果が期待できる場所だった。例年なら少し無理をすれば渡渉して行く事もできたのだが、今年は川が深くなってボートでなければ近づけなくなっていた。ポイントに着くとすでにライズが始まっていた。
いくつかあるライズから、大き目な魚のライズを狙って釣り始めた。すぐに反応があり良型のトラウトが釣れてきた。暗くなるのは早い。正確な動作を心がけ、手返し良く釣り続けた。結局この日は３０分足らずの時間で８匹の良型魚をキャッチすることができた。
「この短時間で８匹釣るなんて、本当におまえはよく釣るな」
マリーがあきれたように言った。
「そうだね、さっき言われた通り、少しは、たくさん釣れるようになったと自分でも思ったよ」
いたずらっぽくそう返答してマリーと二人で大笑いした。
最後のイブニングはＲ川本流の倒木下毎年良い思いをしている好ポイントだ
良型のレインボートラウトこのサイズの魚が何匹もライズしていた
こちらはブラウントラウト暗くて魚体が見えなくても。ファイトの感じで魚種はたいてい区別がつく
翌朝、４時半にセットしておいたアラームが鳴った。例年１時半に起きていたことを思えば、たっぷりと睡眠時間をとることができた。
ロトルア･オークランド便の離陸は７時。６時過ぎに空港に着けばよい。帰り支度を整え、早起きしてくれたマリーに見送られてロトルアの空港を目指した。このルートならまだまだあと２０年は来られそうだな。そう思いながら帰途に就いた。
