5日目
この日は夜明け前から雨が強めに降っていた。風の音も時折聞こえてきた。低気圧が近づいているようだった。釣りに出かける時間になっても雨は強く降っていた。
川は数日前から雨続きなので水量がやや多くなっていたが、濁りが強まったりはしていなかった。ただ、気温が下がって魚の活性が落ちていそうなさそうなので、まずは昨日釣りをした下流部のポイントに入って様子を見ることにした。
強い雨の中釣り支度を整えるこの日は低気圧が通過中だった
釣り場に着いてキャストすると1投目からアタリが出た。合わせるとやや軽めの手ごたえを感じた。ドリーバーデンだった。小気味良いファイトで楽しませてくれた。幸先の良いスタートが切れた。
ファーストキャストでキャッチしたドリーバーデンイワナ属独特のファイトが僕は大好きだ
おっとりした顔つきもかわいらしいしかし、その後はアタリがほとんど出なかった。たまにアタリがあってもフッキングには至らなかった。魚がいないわけではなく、やはり昨日と比べて魚の活性が下がっているようだった。雨は相変わらず強く降っていた。
釣りをしている最中も雨は時折強く降ってきたクリスとプールの上流にある瀬の様子を見に行った。すると小さな深みにスチールヘッドが定位していた。何回かビーズを流したが反応してくれなかった。そこでフライをエッグサックリーチに変えてみた。数投するとインジケータにはっきりとしたアタリが出た。
フッキングも決まり魚は比較的おとなしく手元まで寄ってきた。ただネットを持ってきていなかったので魚と一緒に流れを下ってランディングした。ランディングまでに時間がかかり、魚が少し疲れてしまったので手早く写真を撮ってリリースした。
上流の瀬で釣ったスチールヘッド長いファイトで魚が疲れていたので素早くリリースした
10時過ぎまでこのポイントで竿を出したが、反応が今一つなので上流部へ移動することにした。雨はさらに激しくなり小豆大のヒョウも混じった。次に入ったポイントは初日に竿を出したところだった。釣り場についてしばらくすると雨は小やみになってきた。
まず、初日に釣ったプールのやや上流部にある新しいポイントで竿を出した。クリスによれば、右岸際のえぐれにスチールヘッドが溜まっているという。たしかに見るからに魚がいそうな場所だが木の枝がせり出していて狙いにくい場所だった。試行錯誤しながら岸際を流した。
ここでも最初に釣れたのはドリーバーデンだった。この日はドリーバーデンの活性が高くなっているようだった。次にヒットしたのはスチールヘッドだったが、フッキングするなり岸際の枝の下に潜られてブレイクしてしまった。魚影は濃いがなかなか難しい場所だった。
スチールヘッドが溜まっていた対岸際のえぐれ流すのが難しかったがフライがうまくポイントに入れば反応は良かった
ここでも1匹目はドリーバーデンだったその次のアタリもスチールヘッドのものだった。今度は魚の走りを少し強引に止めてストラクチャーに潜り込まれることを回避した。下流にいたクリスを大声で呼んだがクリスはK氏の魚をランディングしているところで手が離せない状況だった。魚をクリスのいる所まで連れて来いと無茶なことを言ってきた。今ファイトしている場所が必ずしも安全な場所ではないので、ここでクリスを待つより下がっていった方が良いのは明らかだった。魚を下流方向へ誘導し、魚と一緒に川を下った。魚はなかなかいうことを聞いてくれなかった。なんとか50mほど下がったところでクリスがやってきてランディングしてくれた。時間にすればほんの5分程度だが、スリリングな時間の連続だったので、とても長い時間に感じた。キャッチできたのは80cmある堂々とした体躯の雌のスチールヘッドだった。短時間で写真撮影をしてリリースしたが、釣られたショックで少し放卵してしまった。
苦労してキャッチした雌のスチールヘッドずっしりと重たい魚だった
釣られたショックで放卵してしまった昼食後は初日に釣った左岸際の深みの上流部を釣った。ここはスチールヘッドよりドリーバーデンの魚影が濃い場所だった。ドリーバーデンはビーズへの反応がとても良い魚だ。頻繁にアタリがあり、この場所だけで10匹近いドリーバーデンをキャッチすることができた。どの魚も美しい魚体で、サイズは最大魚で54cmあった。僕はイワナ系の魚が好きなので、サイズ的にはスチールヘッドと比べて見劣りするが、ドリーバーデンの数釣りが楽しめてとても嬉しかった。
昼食のサンドイッチ具は毎日違っていた
54cmのドリーバーデンドリーバーデンでは最大魚だ
このドリーバーデンも50cmオーバー美しい魚体だった
K氏のヒットした魚をキャッチするクリス
この魚もK氏をさんざん手こずらせた
T氏が釣った雄のスチールヘッド午後になると雨がやんで薄日が差してきた。釣りの合間には、集合写真を撮ったりして楽しく過ごした。
釣りの合間にクリスと記念撮影相性の良いガイドだった
セルフタイマーを使って全員で記念撮影初日に釣った左岸際の深みの下流側は浅くて広いプールになっていた。薄日が差してきたので魚の姿がよく見えるようになってきた。プールの中央付近をゆっくり泳いでいる魚を見つけ、その進行方向にビーズをキャストした。水底付近を流れていくビーズを魚が咥えるのがはっきりと見えた。一呼吸おいてあわせるとずっしりと重たい手ごたえが返ってきた。
ここは初日にファイト中の対応を誤ってスチールヘッドをキャッチしそこなった場所だった。同じ轍は踏むまいと思った。先手を打って魚の動きを制御し、流れに乗って下られないようにした。すでに10匹以上の魚をランディングしてもらっているので、クリスとの呼吸も合ってきた。ワン、ツー、スリーと声を出してタイミングを合わせ、魚をクリスの持つネットに送り込むようなイメージでランディングした。この魚も80cmある太った雌のスチールヘッドだった。この日はスチールヘッドを3匹とドリーバーデンを10匹以上釣った。午前中はかなりタフなコンディションだったが、ドリーバーデンがたくさん釣れたのでとても嬉しい日になった。
下流側のプールでキャッチしたスチールヘッドビーズを咥えるところが見えてエキサイティングだった
T氏も同じプールでキャッチ
この日最後に釣れたドリーバーデンこの日は10匹以上のドリーバーデンを釣った
駐車スペースが近づく頃には日が射していたこの日の夕食はフランとフランの親戚のマーシャがハリバットのソテーを作ってもてなしてくれた。とてもおいしいかった。食後に寛いでおしゃべりを楽しんでいた時、この町にはアジア系のレストランがないという話になり、その流れでT氏から僕が料理が得意だという話が出て、いつの間にか明日の夕食は僕が和食を作ってみんなに振舞うということに決まった。楽しそうな展開だが同時にプレッシャーも感じた。
夕食は宿でハリバットのソテーとてもおいしかった
フランとマーシャと記念撮影この後翌日の夕食は僕が和食を作ることに決まった
