7日目
起きると空はあいにくの雨模様だった。この日から2日間はフレーザー川でスタージオン釣りだ。ホテルのブレックファストバーで朝食をとり、7時半にホテルを出てフレーザー川の船着場に向かった。船着場まではホテルから5分ほどだった。
朝食はホテルのブレックファストバーでとったセルフサービスだったが品数は豊富だった
朝食ワッフルは自分で焼いた
フレーザー川の船着場ホテルから5分ほどだった
指定された桟橋に行くとガイドが声をかけてきてくれた。スタージオン釣りのガイドはトラウトアンドキングを介してフレーザー川のガイドとして実績の高いＳＴＳガイディングサービスにお願いしてあった。この日のガイドはオリバー、口数の少ない実直な男だった。手際良く出船の支度を整え、8時に船着場を出て釣り場に向かった。
スタージオンはフレーザー川のこの辺りの流域ならどこにでもいて、船着場の目の前でも釣れるらしい。しかし、最近よく釣れているのはもう少し上流だという事で20分ほどボートを上流に向かって走らせた。雨が本降りになってきたがボートには屋根があるので濡れることもなく移動は快適だった。
上流の釣り場を目指してボートを走らせるこの日は雨の中の釣りとなった
ナビと魚探を見ながら釣り場を決めるオリバー実直な男だった
釣り場に着くとアンカーを降ろし、オリバーはすぐにタックルの準備に取り掛かった。スタージオン釣りのタックルと仕掛けはすべてガイドが準備してきた物を使用した。釣り方はいわゆるブッコミ釣りだ。タックルは大型の両軸リールを取り付けた9フィートの専用ロッドだった。仕掛けは遊動錘に一本針のスタイルで、太いライン（強度は未確認）の先に錘を取り付けたクリップを通してスイベルを取り付け、そこに130ポンドのリーダーを70cmほど結び、針は8/0サイズのバーブレスフックを使っていた。錘の重さは流れの強さなどで調整するがこの日は標準的な20オンス（約560g）だった。
スタージオン釣りの仕掛け一本針に誘導錘のシンプルな仕掛けだ
餌にはサーモンやランプレイ（ヤツメウナギ）の切り身やイクラ、少し腐らせたサーモンの身などが用意されていた。これらをその日の魚の反応を見ながら使い分けていくそうだ。
サーモンの切り身新鮮なものと少し腐らせたものが用意されていた
ランプレイ（ヤツメウナギ）皮に切れ目を入れて体液を出してアピール度を高めていた
イクラネットで包んで針に付けていた
仕掛けの投入はガイドの仕事になる。特に遠投する必要はなく、ボートの下流10m位に投げ、仕掛けが底に着いたのを確認したら余分なラインを巻き取って竿掛けにセットすればOKだ。竿は2本使った。
仕掛けを投入したら後はアタリが出るのを待つ仕掛けの投入が終わると、オリバーがアタリの出方と合わせ方をレクチャーしてくれた。アタリは竿先に出る。最初に竿先がタップする（軽くおじぎする）ような前アタリがあり、その時点で魚が警戒心を抱かなければ少しして竿先が連続して抑え込まれるような本アタリが出るという。この本アタリの時に強く大きく合わせ、魚の重みを感じたらリールを数回巻いて更にもう一度合わせるように言われた。スタージオンの口はトラックのタイヤのように弾力があって固いので、しっかりフッキングするためには大きくて強い合わせが必要なのだと言われた。
仕掛けを投入して10分ほど経つと竿先に動きが現れた。前アタリだ。少しして竿先がカタカタと動き始めた。もう少しグッと引き込まれるだろうと思って待っていると、オリバーから早く合わせろと声が飛んだ。慌てて合わせたが魚の重さは伝わってこなかった。合わせが遅すぎると指摘された。あのカタカタとした動きが本アタリだったのだ。
すぐにまたアタリがあった。今度はカタカタし始めたのと同時に合わせた。しかし今度も魚の重さは伝わってこなかった。もう少し待てとアドバイスされた。本アタリがある程度続いてから合わせないと針掛かりしないとのことだった。思っていた以上に合わせのタイイングが難しかった。もう一つ悩ましかったのが竿立ての構造だ。ワンタッチで竿が持ち上げられるように出来ているのだが、僕が合わせようとすると竿立てに引っ掛かってロッドが外れず、合わせのタイミングがずれてしまうのだ。
それでも3回目のアタリは何とかフッキングすることができた。ロッドに伝わってくる魚の抵抗は想像していたより弱かった。リールを巻くと魚はすんなりと寄ってきた。それでも水面に現れた魚体はスタージオンだった。ただかなり小さかった。オリバーがリーダーを持って魚をボートに抜き上げてくれた。大きさは80㎝程だった。オリバーがベイビーと言った。それでも憧れのスタージオンを自分の手で釣りあげることができて嬉しかった。
最初に釣ったスタージオンサイズは小さいが記念すべき一匹だ
まだどことなく幼い顔つきをしているその後も10分に1回程度前アタリがあり、2回に1回は本アタリも出た。しかし相変わらず合わせのタイミングが分からず、うまくフッキングさせることができなかった。そこでオリバーにお願いして、見本を見せてもらうことにした。次の本アタリをオリバーが合わせた。フッキングは見事に決まった。オリバーから竿を渡されてファイトを始めたが、すぐにフックが外れてしまった。バーブレスなのでロッドの受け渡しの際にラインが緩んだ事が原因だった。この魚を釣り逃した事はあまり残念には思わなかった。それより合わせのタイミングが分かったことがありがたかった。本アタリが続いている間でも特に竿先の振れが大きく連続している時に合わせればよかったのだ。
分かった事がすぐに実践できるわけではない。その後も何回か失敗が続いたが、あるアタリはベストのタイミングで合わせることができた。ロッドにはずっしりと重たい魚の抵抗感が伝わってきた。先ほど釣ったベイビーとは引きの強さが明らかに異なった。それほどの速さではないがラインが出始めるとなかなか止まらなかった。下に突っ込まれると両手で支えてもロッドを立てているのが大変だった。雨でロッドのグリップが滑るのも厄介だった。ポンピングしながらラインを巻き取った。タイでの大物釣りの経験が役に立った。
水の透明度が低く、ラインに目印もないので魚との距離が分かりにくかった。少し抵抗が弱まったタイミングを捉えて急いでリールを巻きあげた。突然目の前に魚の姿が現れた。大きさが僕と同じくらいだった。オリバーが5フィート半くらいだろうと言った。
魚を抱えた写真をぜひとも撮りたかったが、このサイズだとボートに上げるのは無理だと言われた。かといって接岸して水に入ってランディングする程のサイズでもないらしい。ボート際で写真を撮ってリリースすることになった。良い画像が残せなかったのは心残りだったが、まともなサイズのスタージオンを釣りあげることができてとても満足だった。ファイト時間は10分ほどだったが、ロッドを立て続けていた左腕はパンパンになってしまった。
今度の魚の引きは強かった
水面に姿を現したスタージオンファイト時間は10分ほどだったがもっと長く感じた
ボート際に寄せると大きさが良く分かるボートに揚げるのは無理だと言われた
オリバーが口を掴んで魚を寄せたスタージオンには歯がない
妙な恰好だが魚とのツーショット本当は抱えて写真が撮りたかった
雨は朝よりも激しくなっていた。アタリの出方を見ながら１時間程度で釣り場を移動しながら釣り続けた。昼食はボートの上でとった。新鮮な野菜がおいしかった。
昼食バラエティー豊かだった
午後になっても雨がやむ気配は全くなかった。ボートのそばには時々アザラシが顔を出してくれた。アタリは20分に一回程度あるが、相変わらず合わせがうまく決まらなかった。オリバーはだいぶうまくなっているからあまり気にするな、今日は魚の食い込みが悪いのだろうと気遣ってくれた。
時々水面に顔を出すアザラシ海からは80kmほどあるがここまでやってくるらしい
その後も何回か合わせ損ないが続いた後で、やっとフッキングに成功した。かかった魚は抵抗したが、先ほどの魚と比べるとそれほどの激しさではなかった。ファイト中にラインに伝わる魚の重さが軽くなった。と、次の瞬間、水面を割ってスタージオンが空中に姿を現した。魚は空中で体をくねらせて針を外そうとした。ラインが緩まないようロッドとリールでテンションをかけ続けて事なきを得た。スタージオンはファイト中にジャンプすると聞いていたが実際に見るのはもちろん初めてだった。その迫力に唖然とした。その後も抵抗は続いたが徐々に弱まってきた。慌てずに魚をボートに寄せ、最後はオリバーがハンドランディングしてくれた。釣れたのは4フィートのスタージオンだった。両手で持ってオリバーに写真を撮ってもらった。ウェブサイトに釣行記をアップするために良い画像を残したいと思い過ぎるのは本末転倒かもしれない。でも、思い通りの画像が撮れてホッとした。
14時を過ぎるとさらに雨が強まり、アタリも少なくなってきた。そんな中、先ほどと同サイズの魚をキャッチすることができた。ただ、この魚はオリバーとの意思の疎通がうまくいかず、画像を撮る前にリリースされてしまった。ちょっと心残りだった。
4フィートのスタージオン迫力満点の姿だ
撮影後はすぐにリリースした
午後になって雨脚が強くなってきた15時半に釣りを終え、20分ほどかけて船着場に戻った。結局この日は4キャッチ1ブレイク、ミスフッキング10数回という釣果だった。雨の中のタフな釣りになったが念願のスタージオンが釣れて気分は良かった。桟橋でオリバーと記念撮影をしてホテルに戻った。
釣りを終えて船着場に戻る100点満点ではないが良い釣りができた
最後にオリバーと記念撮影たった1日だったが色々な事を彼から教わった
