8日目
この日は朝から青空が顔を覗かせていた。カナダ釣行の実釣最終日だ。気持ち良く釣りを楽しもうと決めて船着場に向かった。
船着場のモニュメント朝から青空が顔を覗かせていた
この日のガイドはジョン。陽気で饒舌な若者だった。アタリを待っている間は冗談ばかり言っていたが、釣り場を決めたりファイト中にアドバイスをくれたりする時は真剣そのものだった。
この日乗船したジョンのボート黄色くてかわいいボートだった
ガイドのジョン陽気で仕事のできる若者だった
8時に出船して釣り場を目指した。最初のポイントは昨日の釣り場と船着場の中間点付近だった。昨日4匹釣った事を出船前に伝えてあったので、今日は大物を狙おうということになり、大物の実績の高い釣り場を選んだのだ。同じガイド会社のボートが先にこの釣り場で釣りを始めており、その隣にアンカーを降ろして釣り始めた。
この日もタックルと餌は昨日とほぼ同様だった。ただ2本のロッドのうちの片方には大物をキャッチしやすいよう、一旦刺さると抜けにくいサークルフックを用いた。このフックの場合、合わせもロッドを立ててフッキングさせるより、アタリがあった時にロッドを竿立てに置いたままリールを巻いて合わせた方がフッキングが決まりやすいと教えてくれた。
ガイドによって餌の付け方は異なるようだ。昨日のオリバーは魚にアピールするために餌を大きめに付けていたが、ジョンはフッキングを優先して餌を小さめにして針に付けていた。
餌を準備するジョン餌の種類は昨日と同じだった
ランプレイスタージオンの大好物らしい
仕掛けを投入してアタリを待つ好天でボートの上で過ごす時間が心地好かった
この日は竿立ての後ろの椅子が僕の定位置だったアタリは不意に出るので気が抜けない
隣で釣る僚船なんとなくお互いに意識してしまう
釣り始めてすぐにアタリがあった。このアタリはうまくフッキングできなかったが、2回目のアタリはしっかりと針掛かりさせることができた。手応えからみてかなり良型のようだった。ロッドを立てても魚を止めることができず、魚はラインを引き出しながら隣のボートの方へ向かって行った。こちらがファイトしている事に気付いた隣のボートが投入している仕掛けを上げようとしたが間に合わず、隣のボートの仕掛けと絡んでしまった。そのためか少ししてフックが外れてしまった。最初にかかった魚をばらしてしまい、今日はだめかもしれないと少し不安になった。僕の対応に何か問題があったかジョンに尋ねたが、特に問題はなかったという答えだった。それより隣のボートとの距離が近過ぎたのがまずかったから、少しだけ釣り場を移動しようという話になった。同じ場所で岸際に20mほどボートを寄せて再び釣り始めた。
すぐにアタリがあった。サークルフックを付けたロッドのほうだった。教えられたようにリールを巻いて合わせた。竿先が水面に着きそうなくらいロッドが絞り込まれた。ロッドを立てると強烈な抵抗感が伝わってきた。明らかに大きな魚だった。下へ突っ込むような抵抗が続いた後で、急にラインの向きが変わった。魚がスピードを上げて浮上してきた。ジャンプするぞ、とジョンが叫んだ。少しして水面から空中に巨大な魚が飛び出してきた。その魚は昨日釣った魚と比べて格段に大きかった。こいつは大物だぞ、とジョンも興奮気味に言葉を発した。アンカーを上げてボートで魚を追いながらファイトを続けた。10分ほど経ったが魚の抵抗が弱まる気配は感じられなかった。長くかかりそうだから焦らずにやろう、とジョンからアドバイスされた。さらに10分くらいすると魚の抵抗がいくらか弱くなってきた。僕もかなり疲れていたが力を振り絞ってロッドを起こした。観念したかのように大きなスタージオンが水面に姿を現した。
しっかりと合わせた後でロッドを立てる最初の抵抗の強さでだいたいの大きさが分かる
この魚は大きそうだった
ロッドを絞り込まれ懸命に耐えるとてつもないパワーだった
巨体が宙を舞う自分が釣っている魚とは思えなかった
ジョンが慎重に操船してボートを岸に接岸させた。釣りを始める前に、ウェブサイトに釣行記をアップしているのでできるだけたくさん写真が撮りたいとあらかじめ話をしておいたのだ。もちろんジョンは快諾してくれた。ボートを降りて魚の元へ向かった。岸際は膝ほどの水深だった。まず長さを計った。7フィート4インチ、220cmもあった。7フィートオーバーはここ最近ではかなりの大物だぞ、とジョンも喜んでくれた。次に抱えて写真を撮ることにした。しかし、これが難しかった。魚が大きすぎて一人で持ち上げることができないのだ。体重は推定だが200ポンド近くあった。そこで頭部だけを抱きかかえて写真に収まった。夢がかなった瞬間だった。魚にはしばらくの時間、浅場で窮屈な思いをさせてしまったが、リリースすると何事もなかったかのように悠然と泳いで深み消えていった。直前までスタージオンを抱いていたグローブを外し、ジョンと固く握手した。
とりあえずロッドを持って岸に降りるまだ釣りあげた実感が湧いていない
口が身体の底面にあるのでロッドを立てると腹が上になってしまう
口を掴んで抱き寄せるとにかく重たかった
大き過ぎて全身を写真に収める術がないとりあえず頭を抱いて記念撮影した
胴体を水面から上げようとしたが無理だった
スタージオンの頭部魚というより恐竜のようだ
ジョンも嬉しそうだ
フレーザー川の風景をバックに記念撮影夢がかなった瞬間だ
リリースすると悠然と泳ぎ去っていった
