3日目（2）
同じポイントで9匹も釣るとさすがに反応が乏しくなった。上流部へ移動することにした。次のポイントまでカヌーを漕いで300mほど遡った。そのポイントでも川の深みの岩陰に魚が潜んでいるだろうと考えた。狙った場所にフライを通すと1投目から反応があった。このポイントでは30分で3匹の魚を釣ることができた。お前は魔法でも使っているのかとアランが呆れたように言った。
次のポイントまで漕ぎ上がるカヌーを漕いでいるだけで気持ちよかった
このポイントでも深みの岩陰を狙った
狙い通りの場所でヒットした良型
すぐに次の魚が釣れたさらに200mほど上流までカヌーで遡った。最後の30mくらいは流れが強くなり進むのが大変だった。カヌーで遡れるのはそこが限界だった。それより上流は瀬と小さなプールが連続していて、さらにその先には小さな滝が見えた。この滝はTeed滝という名前だとアランが教えてくれた。Teedはイエロードッグロッジを建てた初代のオーナーの名前だ。彼はロッジを建てた翌年、天候の急変で転覆したボートからゲストを助けようとして自らは命を落としてしまったのだ。そんな彼の名前を遺すため、この滝に彼の名前を付けたそうだ。
滝の下の流れはこれまで釣ってきたポイントと比べて流れが速かった。そこでフライの上方にスプリットショットを取り付けてフライを沈みやすくした。ここでは2匹のグレイリングをキャッチすることができた。滝の近くまで行って滝の写真を撮り、カヌーに戻った。
さらに上流を目指す
流れの速い場所で釣ったグレイリング
Teed滝規模は小さいが美しい滝だった
帰りは最初に釣りをしたポイントまで一気に漕ぎ下った。アランが瀬の下にカヌー降ろしている間、またここで釣ってみた。するとすぐにアタリがあり、グレイリングが1匹釣れた。この川ではグレイリングを15匹キャッチした。アランが信じられない釣果だと呟いた。
下りは流れに乗るので漕ぐのが楽だった
この日15匹目のグレイリングアランが驚くほどの好釣果だった
その後カヌーに乗り込んだ地点まで漕ぎ下った。カヌーを再び陸に上げて林の中を歩きボートに戻った。時刻は15時30分だった。
出発地点まで漕ぎ下る天気にも恵まれて楽しい釣りができた
林を抜けてボートに戻ってきたロッジに帰るにはまだ早かったので再度トローリングをすることにした。今度は湖の中央部の沈み根周辺のかけあがりを狙ってみることにした。ここでは2匹のレイクトラウトが釣れ、うち1匹をキープした。キープした魚はロッジから少し離れた湖岸で捌き、身だけをロッジに持ち帰った。ロッジの近くに熊を寄せないための方策だ。17時30分にロッジに戻った。
夕方は湖の中央部で竿を出した
午後の一匹目この魚もよく太っていた
こちらはややスリムなレイクトラウトレイクトラウトは体色や顔つきが個体ごとに異なっているので釣っていて飽きない魚だ
キープした魚は湖岸で捌いて身だけを持ち帰った夕食後はダンカンレイクのグラハムレイクからの流れ込みで竿を出してみた。昨夜グラハムレイクの流れ出しで釣りをしていた際に、ダンカンレイクの流れ込みに魚が入ってきている気配があったからだ。流れ込みの岸に立って静かに様子をうかがっていると、かなりの数の魚が集まってきていた。産卵のために遡上しようというレイクトラウトの本能なのだろうか。この流れ込みは膝下ほどの深さで石も多かった。
まず魚を驚かせにくいルースニングで様子を見ることにした。フライは昼間のグレイリング釣りで好反応だったMSC-Lにした。10分ほどキャストを繰り返していると、マーカーに反応があった。あわせるとずっしり重たい手応えが返ってきた。ロッドは8番で13ポンドのティペットを使っているので多少の無理は効いた。しかし魚のサイズや周囲の状況が分からないので慎重にファイトした。魚をかけた場所でランディングするのは難しいと考え、桟橋に上がってランディングすることにした。魚をかけたまま30mほど移動した。かなり暗くなってきていたので水中の魚の様子はよく分からなかった。スレがかりしている可能性もあると思っていた。ボートに積んであったネットを借りてランディングした。すぐに確認するとフライは魚の口にしっかり刺さっていた。大きさは63㎝だった。自分のスタイルでレイクトラウトをキャッチすることができ、とても嬉しかった。ゴードンが様子を見に来たので記念撮影をお願いした。
夕暮れのダンカンレイク
ルースニングで釣ったレイクトラウト会心の一匹だ
さらに暗さが増してきたのでルースニングでは魚へのアピールが弱いだろうと考えた。そこでリトリーブで誘ってみることにした。20ポンドリーダーにエッグサックリーチを直結した。この作戦も正解だった。次の魚がすぐにヒットした。この魚も1匹目と同じように桟橋でランディングした。写真を撮ってリリースしているとゴードンがやってきた。そして空を指さして「ノーザンライト」と言った。見上げるとてっきり雲だと思っていた物が緑色に淡く光っていた。オーロラを初めて見た瞬間だった。すぐには実感が湧かなかった。今夜はきっとよく見えるぞと言ってゴードンは帰っていった。
まだ釣りのできる明るさだったので、もう少し釣りを続けることにした。次の魚もすぐにヒットした。オーロラの下でレイクトラウトとファイトしているのがとても幸せだった。この魚をリリースしてこの日の釣りを終えた。自力でレイクトラウトを3匹も釣って気分が良かった。
エッグサックリーチで釣ったレイクトラウトキャスティングでレイクトラウトが釣れて嬉しかった
部屋で着替えてカメラを準備し、オーロラの鑑賞と撮影を始めた。辺りが暗くなるとオーロラはその明るさと美しさを増していった。前週、太陽に大規模なフレアが発生したことも幸運だった。時には驚くほど明るくなったり、色を変えたり、姿を目まぐるしく変化させたりしてくれた。コンパクトデジタルカメラでもそれなりに撮影することができた。飽きることなく日付が変わるまでオーロラを見続けた。
湖の上に広がるオーロラ生で見られてとても感動した
