五日目（チンクエ・テッレその１）
この日は、今回の旅行の最大のイベント、チンクエ・テッレへの日帰り旅行に出かけた。
７時前にホテルを出て駅に向かった。空はまだ朝焼けが残っていた。チンクエ・テッレまでは列車で約２時間半。途中ピサとラ・スペツィアで２回乗換えが必要となる。
朝７時前のフィレンツェS.M.N.駅ここからチンクエ・テッレへの日帰り旅行に出発した
ピサ行の電車通学する学生の姿が目立った
フィレンツェを７時半ごろ出発する列車でまずピサに向かった。ピサまでは１時間ほどだった。ピサで３０分ほど待ち時間があったので、駅のバールでコーヒーとブリュオッシュの簡単な朝食をとった。ピサからラ・スペツィアまでは特急を使った。この区間もほぼ１時間の所要時間だった。ラ・スペツィアはチンクエ・テッレの入り口となる町だ。駅には多くの観光客が詰め掛けていた。ここでローカル線に乗り換え、１０分ほどでチンクエ・テッレの南端の村、リオ・マッジョーレに到着した。
ピサからラ・スペツィアまで乗った特急電車席は全席指定だった
ラ・スペツィア駅の構内多くの観光客でにぎやかだった
ここでチンクエ・テッレについて簡単に説明しておきたい。チンクエ・テッレはイタリア北西部のリグーリア海岸にある５つの村からなる景勝地で、元来｢五つの土地｣を意味する言葉だ。海に面した崖にへばりつくように家々が立ち並ぶ独特の景観は世界遺産に登録されている。海岸沿いの斜面ではブドウの栽培が盛んで、白ワインの｢チンクエ・テッレ｣や、良質のブドウを陰干しして作るデザートワイン「シャケトラ」が地元の特産品となっている。
５つの村は、南から北に向かってリオ・マッジョーレ、マナローラ、コルニリア、ヴェルナッツァ、モンテロッソ・アル・マーレの順に位置している。交通手段は鉄道と船が主に利用されている。鉄道の駅は全ての村にあるが、コルニリアは小高い山の上にあるため港がなく、船では行くことができない。また、村をめぐるハイキングコースも整備されており、特にリオ・マッジョーレとマナローラの間のルートは｢愛の小道（Via dell'Amore）｣として人気の観光スポットになっている。
リオ・マッジョーレの駅は海沿いの急傾斜地にへばりつくように造られており、ホームの一部はトンネルの中だった。多くの客が降りたが、その大半は駅から愛の小道へと進んでいった。駅から集落に向かう道はトンネルになっていた。そのトンネルを抜け、さらに狭い階段を下りると目の前に海が広がった。海の近くまで進んで振り返ると、そこには写真などを見て憧れていたチンクエ・テッレの風景が広がっていた。
到着したリオ・マッジョーレ駅開けた土地が少ないのでホームの一部はトンネルの中だった
愛の小道（Via dell'Amore）に向かう階段多くの観光客がこちらに進んでいった
集落に続くトンネルチンクエ・テッレの歴史などが壁に描かれていた
トンネルを抜けて階段を下り狭い道を抜けると目の前に海が開ける
港の高台まで進んで振り返るとチンクエ・テッレ・独特の景観が広がる
港に係留されたボート水がとても青かった
しばらくその風景を眺めた後、船着場まで行き一日券を購入した。船着場は磯の一部をコンクリートで固めて平らにした程度の小さなものだった。運行スケジュールは事前に船会社のホームページでチェックしておいたが、念のため時刻表を受け取り、変更がないことを確かめた。
船着き場のチケット売り場船は昼間だけで１時間に一本程度だ
階段を降りたところが船着き場ただの岸壁にしか見えない
船の出航まで１時間少しあったのでまずはシャケトラを売っているエノテカを探すことにした。メインストリートの坂道を登りながらエノテカを探した。しばらく進むと道の左側にエノテカを見つけた。中に入り店主にシャケトラを探していると伝えると、シャケトラの棚まで案内してくれた。そこには１０種類ほどのシャケトラが並んでいた。価格は安いもので３０ユーロくらいから、一番高価なものは１００ユーロもした。このワインが欲しくて日本から来たのだと告げると、それぞれの違いなどを丁寧に説明してくれた。特にお勧めのものを何銘柄か教えてもらい、その中の２種類を購入した。さらにこの近くで試飲できるところはないか尋ねると、港近くのバールで飲めると教えてくれた。
メインストリートは坂道上りながらエノテカを探す
道の左手にあったエノテカ、ENOTECA D'UU SCINTU店主がとても親切だった
陳列されていたシャケトラチンクエ・テッレまで来てやっと実物に出会えた
店主お勧めの４銘柄エチケットの雰囲気と収穫年を参考に２種類購入した
買い物を終え、坂道をゆっくり下って港近くのバールへ向かった。シャケトラを注文すると先ほど購入したものと同じボトルを取り出し、小ぶりのワイングラスに静かに注いでくれた。
口にすると、まずブドウのかすかな酸味が口の中に広がり、ついで濃厚なエキス感と上質な甘味が一気に押し寄せてきた。最後は蜂蜜かメイプルシロップのような蜜の香りの余韻が喉にしっかりと残った。甘党の僕は一口でシャケトラが気に入ってしまった。
メインストリートを下って港近くのバールを目指すのどかな良い村だった
港近くのエノテカ屋外のテーブルからは海を眺めることができる
ワイングラスに注がれたシャケトラ一杯７ユーロ
味は一口飲んで大いに気に入った
バールを出た後は船の時刻まで船着場付近でのんびり過ごした。船はほぼ定刻にやってきた。思っていたより大きな船だった。５，６０人の客が降り、そしてほぼ同数の客が乗り込んでマナローラに向けて出航した。船首脇の撮影しやすい席を確保し、海上からリオ・マッジョーレの集落をカメラに収めた。
港の漁具置き場ダイビングも盛んなようだ
やってきた船から降りる観光客船は思っていたより大きかった
憧れていた風景だ
