この日も朝から快晴だった牧場には低く朝霧がかかっていた
Ｆ川に架かる橋のたもとに車を停め、ここから釣り上った。この日はちょっとしたトラブルを抱えていた。ウェーディングシューズがバスケットシューズのようなハイバック仕様のため、昨日までの遡行で右の脛の両側に靴があたりそこが腫れてしまったのだ。今まで以上に遡行や渡渉に気を使わなければならなくなってしまった。
Ｆ川の中流域この日は水位が少し高かった
この日はダブルニンフの仕掛けを使った。釣り始めてすぐに小型のブラウントラウトをキャッチした。出だしは好調だった。少し釣り上った地点で対岸に良いプールがあった。マリーと肩を組み、少し強い流れを渡ってそのポイントに竿を出した。
すぐに良型のレインボートラウトがヒットしたが、ファイト中にもう片方のフライが尾びれ付近にフッキングしてしまった。ダブルフッキングの状態だ。こうなると魚体が水の抵抗を強く受け、寄せてくるのが難しくなる。川の真ん中に立っているので、こちらが下ることもできない。なんとか寄せようと試みたが、少ししてティペットが切れてしまった。
いったん岸に戻り、牧場を抜けて上流のプールを目指した。ここから上流にかけては大きなプールが連続している。プールの流れ込みを主に狙って魚の反応を探った。時折小型の魚は釣れるが、なかなか良型はヒットしなかった。水位が若干高く、落ち込みの直下にいるであろう良型魚のところにフライを流しこめないのだ。フライを重くしてみたが結果は同じだった。いくつ目かのプールでやっと良型のレインボートラウトをキャッチすることができた。僕以上にマリーがほっとした表情を見せていた。
やっとキャッチした良型のレインボートラウトマリーも僕も少し安堵した
その後はプールだけでなく瀬の深みなど様々なポイントを攻めていった。釣りにくい状況だったが、それなりに魚の反応はあり、午前中に良型をなんとか４匹釣りあげることができた。
大きなプールでファイトを楽しむ至福の一時
やや小ぶりだがこのサイズの魚が一番良くファイトする釣果が今一つなので、午後は川を移動することも考え、早めの昼食にした。
ランチボックスを開けるとスモークサーモンと小さく握ったおにぎりが入っていた。その場で寿司のようにして食べようということらしい。わさびとなぜか胡椒も入っていた。
この日の昼食は、なんとスモークサーモンの寿司ニュージーランドのスモークサーモンは美味しい
マリーは釣りのガイドに関しては抜群に優秀だが、それ以外では時にドジな面もある。これだけ用意してきて醤油を忘れてきた。聞けば朝キッチンから持ち出しておきながら、荷物に入れ忘れたらしい。でも、わさびとコショウだけで食べるスモークサーモン握りはとてもおいしかった。
昼食後、もう少し釣り上り、状況が良くならなければ川を変えることにした。１時間少し釣り上ったが良型は一匹しか釣れなかった。
午後は午前中以上にタフな状況だったそれでも、良型の魚をキャッチすることができた
車に戻り、川を変えることにした。牧場を歩きながら見上げた空には夏の雲が広がっていた。
牧場を抜けて車に戻るこの日は初夏を通り越して真夏のような天気だった
いったん家に戻り、小休止してからＦ川の最下流部へ向かった。これまでの釣果は芳しくなかったが汗をかいた後のビールは旨かった。
いったん家に戻り小休止ニュージーランドのビールはおいしい！
Ｆ川の最下流部も冬の間に流れがかなり変わっていた。１時間ほどいろいろなポイントを攻めたが、小型のトラウトが数匹釣れただけだった。
Ｆ川の最下流部いろいろなポイントを探ったが、魚の反応は芳しくなかった
「今日は釣れなかったな」
帰りの車の中でマリーが言った。
「たしかに。でもこれが釣りさ。そうだろ」
「たくさん釣れる日ばかりじゃ面白くないよ。こういう日もあるから明日また釣りに行こうって思うのさ」
「それに、毎日今シーズン初めて行く川ばかりって、とてもすごいことじゃないか。もちろん、何の保証もないんだから、良い思いをすることもあれば、今日みたいな時もある。だから楽しいんじゃないか」
心の底からそう思って言った。マリーは笑って頷いてくれた。
夕食が早めに終わったので、２年ぶりにフレキシーキャナルへ行ってみることにした。
町はずれの林道の入り口が閉鎖されていたため、少し遠回りして森林会社の脇を抜けて行った。約３０分のドライブでキャナルに着いた。途中の林道から見る風景は大きく変わっていた。道の両側は、これまでは森ばかりだったのだが、途中に広大な牧場ができていた。
１９時半に着いたキャナルは静まり返っていた。魚の気配はあまり感じられなかった。水量も少し多いようだった。ライズが始まる前にニンフを流してみたところ、一回だけ反応があったが十分フッキングできなかった。
2年ぶりに訪れたフレキシーキャナル魚の気配は希薄だった
２０時を過ぎると少しだけライズが始まった。ほんの数匹がクルージングしながら時折ライズしている感じだった。ドライフライを投げても反応しないので、ごく短いティペットを足してドロッパーにニンフを結んだ。キャナルの岸をライズを探して右往左往しながらキャストを繰り返した。そして、何とか２匹のトラウトをキャッチすることができた。いずれの魚もドロッパーを口にしていた。釣りを終えて空を見上げると星がきれいだった。
ライズをしつこく狙って何とかキャッチしたブラウントラウトここの魚はみな丸々と太っている
